スタッフが持ち回りで書いています。不定期更新です。
by guy5mituko
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2008年 01月 15日
チカ ミツコ 2008.01.15(火)
ふゆかもめ桃色遊戯していたよ 田邊香代子
ときどき見たくなる映画に
マルグリット・デュラス女史の「愛人」という
フランス映画がある。
仏領インドシナのメコン河流域の
船置き場の端ゲタに、もたれながら
浅黄いろの空を飛び交う、カモメを
みている少女は15歳。
お金持ちの中国人青年の
愛人である。
相手を愛しているか、どうかも
彼女にはわからない。
わかれた後も、あれは愛だった
のだろうかと考える程度である。
思春期という感情の、るつぼの中で
悪夢にも似た悦楽と、絶望を
くりかえす。
「していたよ」の「よ」は感動の
助詞として、いきいきとした
効果をあげている。
カモメが、ふいと水の匂いの
流し目をくれたようで、胸の
あたりが、ひそかにさざめくのだ。
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